静岡の身近な昆虫たち  観察記 2


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 1998/06/18

 前回の書き物から半年以上も経ってしまった。その間に冬が過ぎ春が過ぎ、もうじき夏、いやもう夏である。
 今年もおおむね同じ所で同じ時期におんなじ虫たちがおんなじ数くらい見られる。全く自然界はえらいものだ。

 ところで、虫ってそんなに見つかりますか?と聞かれることがある。虫がいそうな所を見てもなかなか見つからないという。ホントにいないのかも知れないが大抵の所ならばそれなりの昆虫群がいるものである。

 よく図鑑などで、例えば’水辺の虫たち’とか’雑木林の虫たち’のようにいろんな虫がごっちゃに一緒にイラストに書かれていることがある。でも実際には季節による時期、時間帯、乾湿や陽陰、植生などによっているものはそれぞれに異なる。だからそうしたイラストのようにどれもが一度に見られることはない。また、姿をあらわにしているのは大抵の場合まれであって葉裏などに隠れていて目に付かないようにしているのである。
 でも、そうとはいえ、その場所をじっくりと腰をすえて丹念に見ていけば、一通りのそれなりの昆虫たちが揃っているものである。一度だけでなく時間や季節を変えたりして何度を通うことも必要だろう。
 ようは探し方しだいである。(・・・本当に何で?というくらい乏しい場所があることはある。)

 五感を働かせて、虫たちとの駆け引き。そこに昆虫観察の面白さがある。
 なお、夏は暑さとカ・ハチ・アブとの闘い、体力勝負でもある。


 1998/07/19

このごろの昆虫流行り

 このホームページを始めて約1年と半が経った。どうもこのところいわゆる’身近な’昆虫というのが注目されつつある空気を感じる。身近なそこらへんにいる虫にあえて着目した出版物が続々と出ている。また昆虫採集の復権がされてきたともいうし新聞雑誌などメディアでも昆虫について取りあげられることが多くなってきているのではと感じている。
 こんな中この虫の季節に生きたカブトムシなどを手に取ってみると、改めてほんと虫って面白い生き物だなと思うのである。

 以前よりも身近な昆虫類が注目されてはきているが、テレビなどで多いのはやはりオオクワガタで、本屋で夏の昆虫特設コーナーを覗いてもクワガタ関連の本ばかりである。無いよりましか?いや間違った方向にいかないことを祈るばかりだ。
 そんな追い風が吹き始めてきたなというものの、でもやはり世の大勢はそうともいかず、身近な川や野山へ行ってもかつての私のような昆虫少年、いやそこまでいかなくともせめて夏ならトンボやセミ取り、オタマジャクシやザリガニ取りくらいの遊びをする子供がわんさかいてもいいものだが、ほとんど出会うことはない。

 これはたまたま出会わないだけなのだろうか?野山で散策しているのは年輩の方々がほとんどである。
 今の子供たちにとって身近から虫が消え、日常から虫が消え、虫と接する感覚というものが無くなってしまったのか。興味以前に虫の存在は非日常的な存在になってしまったのではないのか。

 パソコンショップで昆虫採集のアドベンチャーソフトがあった。昆虫の種類によって探し方などがあってそれにしたがい画面の中で虫を採集する、実在する昆虫たちが素材となっているようだがどんなものだろう。それと虫版のたま○っちも登場したし。・・・現実の昆虫の観察や飼育、採集の経験があってほんの遊び程度に考えればいいのだが。

 身近な自然に注目している者は、当然ではあるが、かつての豊かな状況をわずかでも知っている者であって、地域にもよるだろうが多分私くらいの年齢が急変した環境を実感している限界なのではないのかと思っている。将来再度豊かな自然が甦ることを前提としても、現在の子供たちのような今のこの状況が当たり前としている空白の世代に、どうやって仮想現実でなく現実の自然の面白さを知ってもらえるのだろうか。というのが今後の課題だろう。

 このホームページを開いた後も身近で開発は続き確実に野生生物は減少している。現実問題として身近なごく普通の自然・生物を考慮するならば、何も出来ない。経済活動は成り立たない。この経済活動を存続させつつ我々は一体何が出来るのか。
 野生生物を擁護することは、世間的に常識的に儀礼的に良いこと正しいことと言われるが、現実にそれは”変”であり、”奇”であり、”異”である。昆虫などと言えばなおさら。

 こんな状況をみていると身近な自然、里山の復活などまだまだ遥かに遠いと感じずにはいられない。
 今のうちならば、静岡のこの今の環境ならば、きっとまだ間に合う。


 1998/08/06

身近とは

 さて、このホームページのタイトルになっている”身近な”というのはどういう意味なのか。何処までが身近で、何処から身近でないのか。
 ”身近な昆虫”を私なりに考えてみた。”身近”とは・・・

 − 市街地から自転車でおおむね20分程度で行けるところ。
   または、家の庭、家から見える山、通勤通学途中の公園や川など。

 私の場合、範囲としては瀬戸川下流域と蓮華寺池公園や高草山の低地部分などがそれにあたる。
 現在、一口に市街地と言っても郊外にその範囲は広まっているので、自然の豊かさというか量と質は人によってずいぶんと異なってくるだろう。

 本来は自転車で20分というのも広すぎるかもしれない。せいぜい自転車で10分、歩いていけるところ、学区内というのが適当か。つまり日常生活、実生活と係わり合いの深い場所である。子供が学校帰りに遊んでいける自然があること、これが理想的。

 ”身近”という概念も、自動車の利用が当たり前となっている今、その意味はずいぶんと変化し、自動車で30分や1時間くらいなら近いという人もいるわけで、この錯覚が本来の身近な自然に目を向けなくさせてしまう一因となっている。


 1998/10/12

小さな開発

 10月某日、マツ林のマツ9本が切られた。
 樹齢は約50年〜150年でなかなかの大木。マツの他エノキやアカメガシワなどの雑木も豊富だ。
 そこは防風林の役割を果たすマツ林の一角で、その周辺はサギ類が多く伐採前のこれらの木にもサギたちが羽を休めていた。

 そんな所だから昆虫類も多くが生息していることが推測された。

 下草がはらわれ、根元にチェーンソーが食い込んだ。その振動と音に刺激されたのだろう、こんなにいるものなのかというくらい無数とも言える虫たちが姿をあらわした。
 地獄である。敵味方もない。どの虫たちも狂乱状態で右往左往するばかり。それでも切られる住みかの樹皮の隙間に逃れようとする。
 ハサミムシ、ゴキブリ、ムカデ、ワラジムシ、ダンゴムシ、カメムシ、ゲジゲジ、アリ・・・・

 伐採後、カマキリ2匹と若干の甲虫類を救うだけだった。
 何の価値もないといわれるこれらの虫たち。人知れず姿を消さねばならない。

 たった9本。
 私は何も出来なかった。ただ見ていることしか出来なかった。

 そのうちそこは綺麗なところになる。


 1998/11/14

この頃の虫

 今年の11月はちょっと変である。サクラが咲き、クサギが実をつけながら咲いている。野原ではタンポポ、スミレ、オオイヌノフグリが咲いている。

 でも11月の中旬ともなると、野山にいっても目に付く虫は少なくなる。藤枝・焼津あたりの身近な所でこの頃見られた虫を挙げてみる。
 甲虫類はぐっと減り、直翅類やチョウの仲間はまだわりと多い。

 オンブバッタ、カマキリ類、ササキリ類、カネタタキ、カンタン、
 ヨモギハムシ、クロウリハムシ、ミツバチ、アシナガバチ類、トンボ、カメムシ類、
 モンシロチョウ、ヤマトシジミ、ウラナミシジミ、キタテハ、ヒメアカタテハ・・・・など。

 来年も姿を見せてくれ。


 1998/11/24

昆虫を観察する理由

 私が昆虫を観察してこのホームページを作っている理由、基本的な第一の理由は「はじめに」と「観察記」の冒頭で述べた通りだが、もう一つ大きな理由がある。

 今回の昆虫の観察を始める前から、私は家の庭や近郊には一体どんな虫やその他野生生物がいるのか知りたかった。なんて名前なのか知りたかった。そいつは珍しいのかありふれて普通にいるものなのか知りたかった。どんな生態でどんな生活史を送っているのか知りたかった。
 だが意外にも手持ちの図鑑には載っていないものばかり、じゃあ、図書館にいけば何か地元の生物についての文献があるだろうと赴いたが昆虫については特に見当らず、役所に尋ねても期待する答えは得られなかった。
 結局のところ、野鳥についてはそれなりの文献が見つかったが、私が特に求める昆虫については何もないに等しかった。

 地域の自然についての文献にはたいてい昆虫の項があるが、そこに書かれているのはチョウやトンボその他美麗種や貴重種のみと言っていい。なによりも私が知りたい身近な地域のそこらへんにいる虫について触れているものは皆無に等しい。あまりにも普通過ぎる虫については意外にも手がかりが無いのだ。
 それらは、意外にも調査がされておらず、多分普通種といわれるものは一通り生息しているだろう、くらいに推測するしかなかった。
 実際のところ、観察を続けていくと藤枝市、焼津市といった地域内では、なるほど普通種といわれるものはおおよそいるなと実感できた。が、家の周りといった狭い範囲となるとその環境特有の生物相がいるわけで、じゃあ、瀬戸川の土手には何がいるのだろう?平島の公園には何がいるのだろう?・・・・・

 そこで、一般人がそこらにいる虫って一体何者?と疑問を抱いたとき、何を参考にすればよいのか?普通過ぎる虫に限って情報量が何故か少ない。ならば、保育社の昆虫図鑑で調べよ、と言うのか。地元藤枝市立図書館には悲しいかな古いもの、しかも揃っているわけでもない。

 テレビで生き物の番組は多く、世界とか貴重な生き物については詳しいけれども、自分ち庭にいる生き物のことは分からない。
 一体今は、いつ?このインターネットさえ当たり前になりつつある高度情報化社会なのに、こんなことさえ分からない。私は学者でも専門家でもない。だけれども自分なりに分かりたい。知りたい。自分の目で確かめたい。

もう止まらない。



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