静岡の身近な昆虫たち  観察記 5


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 2000/4/2

春の訪れ

 春の訪れをどんなことで感じるかは人それぞれで、菜の花だったり、サクラの花見だったり、それともウグイスのホーホケキョかヒバリのピチクリピチクリか。
 私の場合もそれらに当てはまるのだけれど、どうにもサクラの花より小さな毛虫。
 その他には、田んぼのモンシロチョウ、庭に舞う小さなアゲハチョウ、クビキリギスの鳴き声。こんな感じがここらの春、虫の季節の到来。


 2000/4/8-6/11

川原の昆虫、浜辺の昆虫

 多くの文献で特集が組まれ、その特異性や環境の悪化による存亡の危機が書かれている。私自身これまでもその昔から浜辺に行けば海藻をひっくり返し、川原に行けば石をひっくり返していた。名前は知らなくともいろいろなムシがウジャウジャいて面白がっていたものだった。
 この冬から春にかけて、地元の瀬戸川、大井川、安倍川、富士川と河口から下流部の川原を歩いてみた。海浜を歩いてみようと思い立ったけれど、静岡の中部では、昔のような自然植生がある砂浜がとても少ない。ほんの少し残ったところも荒れ放題であった。
 それらのほとんどはゴミが散乱しているのはかわいい方で、車が走るは、重機が行き交うはでひどいものである。玉石は硬く沈み、虫が潜む隙間などない。
 それでも、さすがに虫で、数は少なくとも残された狭いところで生きていた。大井川から富士川まで、予想通りというか当たり前に同様の種類が見られた。多くのものは海浜性だったり砂地性だったりとその狭い残された場所にしか生きていけない。身近な場所なのだけれどとても遠い存在に思えてしまった。
 ここに来て、海浜や河川敷の開発が活発だ。大井川、安倍川、石津浜海岸、浜当目海岸、静岡は広野の海岸・・・挙げればキリがない。やっとわずかばかりに荒れながらも残っているところも踏みにじるように消えていく。本来ならば保全対策をとらねば成らぬところである。レッドデータ種がいなければ動くことはない。
 耐えて絶えるな。もっともっと川原や砂浜の多様な昆虫たちに注目したいものである。

   
無機的に固く整地された
2000.3 安倍川、国道150線付近
  ひたすらに切り開いた
1999.6 大井川、マラソンコース
   
毎年恒例
2000.6 焼津市 瀬戸川、鴻益橋付近
  疾走する
2000.4 静岡市 大浜海岸
   
どこまでも車
2000.4 吉田町
  たくさん造り過ぎ
2000.4 焼津市 石津浜海岸


 2000/7/1

昆虫観察の危険

 この季節虫取りや自然観察会等で山野に出かける機会が多いだろう。そこで野外活動、特に昆虫を観察する上で特に気をつけたい動物を2つほど挙げておく。
 1つ、ハチ。
 アシナガバチ類の巣は人家周辺にも多く、生垣や公園の植栽の中にむやみに手を突っ込むのはとても危険。または巣がついている草を倒したり、枝を揺らしてしまった時、襲われることがある。私は先日、草刈中に低木の枝が頭に当たったその時、目の前に度アップにハチが見えた瞬間に鼻とアゴに痛みを感じた。どうもその枝にホソアシナガバチの巣があった。幸い半日ほどで痛みは引いたが、目の近くでなくよかった。以前には川原の草地でフタモンアシナガバチのでっかい巣が付いたヨモギを倒してしまったことがある。無事だったがすごい数だった。
 とにかく、草薮を進むときは慎重に、同じ種類のハチが多いなと感じたら要注意。
 もう1つ、ヘビ。
 幸いまだ噛まれたことは無いが、遭遇することはしょっちゅうである。市街地ではシマヘビやヒバカリ、アオダイショウ、ヤマカガシがほとんである。ヤマカガシをのぞけば無毒である。遭遇してもこっちから手を出さない限りじっとしているか、逃げていく。
 であるが、あやまって手に触れたり、踏んずけてしまうのが怖い。藤枝あたりだと、少し郊外にいけばマムシがいるので、山地や山間の草地、特に水辺近くの湿った草地に入る時は要注意である。公園の草地だからと甘く見ない方がいい。そんな所で、手で草を掻き分けたり、石をどかしたりするのは凄く危険。
 また、水辺の低木に登って枝の上でとぐろを巻いていることがあるので、水辺や湿地はとにかく用心すべし。

 
しゃがんでいたら、足元にヒバカリ。


 2000/7/8

変わるか、街の公園

 今年度から焼津市では、公園や街路樹の剪定枝を焼却場で処分せず細かくチップ化して、街路樹や公園の植栽の地表に敷くようになった。これまでカリカリに乾いていた所では保水の役目をするだろうし、マルチングになって草が生えにくくなり、除草作業が軽減されるかもしれない。
 これまで乾燥によって虫がいなかったところでは、何かしか虫が住みつくだろう。都市公園で大規模に敷く事になれば、土壌動物にとっては好条件で、昆虫ならばコガネムシ類の幼虫やアリ、ハサミムシ、ゴミムシ、コオロギなどが増える可能性がある。実際、敷いたところを見てみるとコオロギの幼虫がたくさんいた。
 樹木の枝葉を燃やすことなく土に返すという事と、昆虫を含め野生生物にとって生息場所が増加する可能性がある事、大変興味深い試みである。


 2000/7/11

駅前のコオロギ

 ちょうど今朝の新聞に静岡駅前に建設中の地下駐車場の記事が載った。その昔は古い郵便局があって、この前まではみどりの駐車場と芝地に囲まれた遊歩道があった。
 どうって事のない芝と園芸樹木の緑地であった。そんな所であっても夏の夜にそこを通るとルルルルルーーーーとコオロギの音が聞こえてきて、繁華街の喧騒から一瞬に開放されて、その時が1つの楽しみであった。
 ちょっと前に通ったとき樹木が引っこ抜かれ穴ぼこだらけの芝地の状態であって、そのなかでもコオロギが鳴いていた。あのコオロギたちはどうなってしまったのだろう。
 新しい駐車場の地上部がどうなるのか知らないが、緑地になったならばきっとどこからかコオロギがやってきて、その音を聞かせてくれるだろうか。


 2000/9/3

東名高速の植栽

 東名高速・焼津インターチェンジから名古屋方面へおよそ500mの北側の法面。これまでまばらな高木でススキが繁っていた。
 ここに樹木の植栽が始まった。

高木 --- ヤマボウシ、ヤマモモ、エゴノキ・・・
低木 --- ツバキ、アジサイ、レンギョウ、ウツギ、ズオウ、アベリア、ムクゲ・・・

   

 まったく地域の自然に合っていない。園芸種は論外。

 事故被害を軽減させる等の他に、どんな目的で設計がされているのか知らないが、地域の自然、野生生物のためのコリドーなどというならば、おおきな誤りである。この場所の本来の自然というのを全く考慮していない。
 ここは、このあたりでは珍しくカヤキリが毎年多く発生するところ。今までのようにススキ草原で維持されていくならばここのカヤキリも安泰だなと思っていたら、このような状況になってしまった。
 このまま植栽されて、定着して、これらの樹木を管理していくならば、この周辺のカヤキリは絶えてしまうだろう。
 なにもこんな所を園芸植物園にして手間をかけるよりも、これまでの草刈程度の管理でカヤキリが多く発生する場所とすれば、どんなに評価できるだろう。
 まさか・・・である。残念。できるならば再考願いたい。



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