静岡の身近な昆虫たち  観察記 11


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 2002/12/29

原風景、原体験、原昆虫。

 近頃の自然ブームというか、単なるブームではなく自然回帰への流れというか、里山、原体験、原風景などの言葉がよく目に付き、耳に入る。
 私自身、あえてそのような言葉を使わなくても、それなりの自然、草花や昆虫、その他もろもろの動物たちに触れてきたつもりだった。そのような言葉は使ったこともなく、意味も何となく分るような、だが、ピンと来ていなかった。

 環境教育、自然に触れねばならない、観察をしなければならない、さあ雑木林へ、里山へ・・・。どうも私は固まってしまうのだ。
 里山のような所で、自然観察会をやることもあるが、私は本当の里山を知らない。なぜならば、特に田舎の出でもなく、どちらかといえば街の人間で、最近の里山についての本に書かれているような雑木林で遊んだり、草木遊びをしたりなど、したことが無かった。
 また、自然がどうの、観察がどうのと学校で教わった記憶がない。ただ一冊の古くボロボロの昆虫図鑑があって、学区内のあちらこちらをウロウロと歩き回っていたに過ぎない。

 里山。
 雑木林、田んぼ、カブトムシ、クワガタムシ・・・。日本の原風景。
 そのような、地域、環境で育った人はとても幸運で、そうなのかも知れない。が、かならずしもそうではない。違う場合が多いのではないか。

 ちょうど、眠りから覚めるとき、うとうとまどろんでいるとき、私の頭の中には、草原が広がる。ススキ原のような、川原のような、砂浜のような、ところどころに樹木が点在していて、石ころや枯木が落ちている。
 どこまでも続いていて、歩くたびにバッタが飛び交うのだ。枯木をどかすと小さいクワガタやらなにやら、いろんな虫がいるのだ。
 小さい頃、そんなに広い草原など行ったことがない。でも深く刷り込まれている。

 ともかく虫が好きで、そこらの道端や街の所々にある空き地の草原で十分だった。幼稚園の裏だったり、病院や学校の跡地だったり。近くに谷津山があったが、今言う里山のような山でもなく、虫取りはもっぱら街中であった。
 今となると大した広さではないのだが、お気に入りの空き地があった。きっと草刈りが時折されていたのだろう。今思えばさっぱりした草原だった。ともかくバッタがウジャウジャいた。

 私の原昆虫はバッタだ。

 ショウリョウバッタがたくさんいたが、オスでも割合簡単に捕まえられて、あんまり面白くなかった。それよりもやはりあのでかくて立派なトノサマバッタが憧れだった。
 私にとってはオオクワガタに匹敵するほどであったに違いない。
 基本は素手で捕まえること。網を使えばきっともっと簡単に捕まえられただろう。どうしてか。きっと素手で捕まえた時のうれしさというのがたまらなかったのだろう。その分、よくケガをしたような気がする。
 結局、その草原では一度もトノサマバッタを捕まえることができなかった。
 その頃は、目が良かったから、随分遠くにいるバッタが見分けられた。だから余計に悔しかった。
 そっと、そっと目前にまで近付き、手を伸ばす。飛ぶなよ、じっとしていてくれ。だけど触れるかどうかの瞬間飛んでいってしまうのだ。

 駿府公園にもトノサマバッタがいて、行くたびに追いかけていた。そして、サツキか何かに追いこんで捕まえたとき、何とうれしかったこと。初めて持ったトノサマバッタの脚の赤がとてもきれいだと思った。


 2002/12/29

原風景、原体験、原昆虫。2

 今思えば、たいした自然に触れてきたでもなく、まさしく家の周りの身近な昆虫たちが相手だった。
 昆虫意外もそう、ドジョウ、ナマズドジョウ(ホトケドジョウ)、ザリガニ、大きなカタツムリ(ヒラマイマイ)らも、家の前や近所の水路、コンクリブロックの塀で十分間に合った。そしてヤモリとアオダイショウとドブネズミが家に住みついていた。
 当時の虫取りで印象に残っているのは、大したものはない。けれどもそれらに出会うと今でもとてもうれしいのである。
 バッタの仲間。ショウリョウバッタ、トノサマバッタ。色とりどりのクビキリギリス。海岸によくいた小さくてヒゲが長いバッタのような虫(おそらくウスイロササキリ)。カワラバッタ、海岸の草原でよく捕った。青い翅がきれいだった。
 カメムシの仲間。カメムシと意識していなかったが、草原によくいた臭い白い点がある虫、シラホシカメムシ類。
 ハサミムシの仲間。黒くて大きくて脚が黄色っぽい。ハマベハサミムシ。
 オオカマキリ。秋になると、卵がよく見つかった。
 カブトムシ。谷津山にたくさんいて、バケツ大盛りの幼虫を捕まえたことがあったが、そんなに関心がなかった。
 キボシカミキリ。近所のイチジクの木にウジャウジャいた。
 ヨモギハムシ。近所の裏道に生えたヨモギによくいた。
 小さいゲンゴロウ。空き地の水溜りにいた。おそらくヒメかハイイロか、コシマか。
 アメンボ。雨上がりの未舗装の水溜りでもスイスイしていた。それほど多かった。
 謎の金色の虫。カメノコハムシの仲間だったが、一体何だったのだろう。
 カイコ。野生のものではないが譲り受けて飼っていたがどんどん増えて、ついに餌が追いつかなくなった。
 オカダンゴムシ。昆虫ではないが、なるべく大きいのを捕まえて、脚の数を数えていた。
 ヤケヤスデ(たぶん)。昆虫ではないが、触ると臭くて渦をまく脚がたくさんの虫。植木鉢や石の下にいた。好きではないが何となく気になる虫だった。

 なんだか、人気が無さそうな虫ばかりだ。それでも私にとっては魅惑の虫たちであった。余計な知識、先入観というものがなかったのだ。
 多分、他にもいろんな昆虫がいたと思う。どうも直翅系に惹かれていたようだ。
 それでも、その土地の、それなりの原体験、原昆虫だったと思う。貴重な体験であったと思う。そんなでも毎日のようだったから、生物を観察する眼が養われたのだろうと思う。そして、失敗だらけでも実際に飼っていたことが良かったと思う。

 だから、カブトムシ、クワガタ、タガメ、ゲンゴウロウ・・と言っても、はてな?となってしまう。  たとえ街中でもそれなりの地形にあった自然、生き物がいるのだから、なんでもかんでもそれらの昆虫というのも無理があると思う。

 あまりにもきれいになりすぎた街でどうやって原体験をしていくのだろうか。せっかくの緑地にしても、庭木のようなのを植えて、原風景の原点である雑草の存在を許さない。
 街路樹や公園も、ほとんどの邸宅の庭もそう。
 学校や庭に、無理に昆虫などの生息場所を作っても、どうしてもおかしな空間になってしまう。やはり雑草と呼ばれるような草や勝手に生えてきて切っても切っても伸びてくるような雑木がないとだめ。その土地の普通種すら呼びこめない。半分放ったらかしにした緑地の方が昆虫がにぎやかだ。
 そんな空間を拒絶する風潮、役所の姿勢。たとえ雑草原でもしっかりと草刈りをすればいい。それでもいけないのですか。
 いくら自然体験をしましょうと謳っても、あまりにも閉ざされた偽自然の中で自然と触れ合い観察をしましょうといっても、何が分かろう。
 たわいもない本当の自然が、少しでもいいから、然とあればとても面白いと思う。
 そんな所にいつの間にか住みつくのが、その土地の昆虫だと思う。そのうち、そんな昆虫も回復できない状況になってしまうだろう。
 たとえ好ましく思わない人がいたとしても、その意味を説明できる姿勢を持ちたい。

 昆虫の好き嫌い、その他動物の好き嫌いはひとそれぞれで、たとえ昔でも虫を追いかけていたのはきっと多くはないだろうし、私のようなのはかなり稀だったと思う。
 たとえ周りの自然環境がよくても関心がなければただの身の周り。
 それでも、身近に少しでも本物の自然が存在していて、日常の中にそれらの自然の動植物があった。
 興味関心があればきっともっと見るだろうし、無くてもその存在を知っている。
 特別な時間に、そんな気分でもない時に、見ようとしても面白いだろうか。
 日常に、毎日、虫でも草花でもなんでも目に触れることが大事である。たとえ害虫でも、不快な虫でも。
 もし、害がある虫や不快な虫はかんべんしたいのならば、それなりの防御技術があるのである。端から消し去る必要もあるまい。

 虫が嫌いでも結構。それでも、鳥でも草花でも何でもいいから、この世に生きる仲間として、今日も元気かい?と思う気持ちを持ちたいものである。


 2003/8/14

オオゴキブリ

 今、地元藤枝市の藤枝市郷土博物館で、「志太の昆虫」展が開催されている。
 標本や生態写真が並んでいる中で、ほんの少し人気なのが、オオゴキブリである。「生きた昆虫を触ってみよう」のコーナーでトゲナナフシと並んで展示している。

 オオゴキブリは木屑に潜り込んでいるから、何処にいるのか判らない。そこで、ほじくり出して、どう?と聞いてみる。
 噛まない? 噛まない。噛まない。脚のトゲがちくちくするかもよ。
 汚くない? 全然、全然。これが汚いなら、カブトやクワガタも汚いよ。
 手の上に乗せてやると、結構おとなしくて、さっきまで、わーわー言っていた人が、結構可愛いじゃん、と。
 最近ペットショップで外国産のゴキブリが売られているけれど、そんな可愛さがいいのかなあ。

 今日もお勤めごくろうさん。夜はゆっくり休んでね。って、夜行性だからなあ。とにかく期間中は耐えてちょうだい。
 来館する方、余計にいじめないでね。

 つい3日ほど前、子虫が生まれた。見もの。

 今回のオオゴキブリ、その後のイベントにも出勤。これまでで、もっともヒトに可愛がられ、ヒトの手のひらに乗ったオオゴキブリだろう。


 2003/8/28

モドキとダマシ

 昆虫の名前には、何とかモドキとか何とかダマシというのが多い。カミキリモドキやゴミムシダマシ、テントウダマシのように科の名前に付いているのもあるし、ナナフシモドキとかクロヒカゲモドキとか、シブイロカヤキリモドキのように種名についているのもある。
 他の動物とケタ違いに種類が多いからだが、種名に付いたものにはどうにも頭を悩ませるものが多い。ナナフシモドキは、普通のナナフシで何に対してモドキなのか、ヤマトオサムシダマシはオサムシに似ているゴミムシダマシ科の昆虫だが、オサムシモドキとなるとオサムシ科の昆虫である。
 なんとなく気になる。まあ、どうでもいいこと。


 2003/8/28

今鳴いている虫。

 鳴く虫の季節だ。現在、庭(藤枝市平島)では次の虫たちが鳴いている。
 ハヤシノウマオイ、セスジツユムシ、アオマツムシ、ツヅレサセコオロギ、カネタタキ。
 近隣の宅地では他に、ハタケノウマオイ、クサキリ、マツムシが鳴いている。ハタケノウマオイは近くの田んぼや土手で鳴いていることがあるが、宅地内では今年初めて聞いた。
 そのうち、クサヒバリやエンマコオロギなども鳴き出すだろう。公園の裏ではスズムシも。

 たいへんな贅沢である。

 藤枝の山間地ではクツワムシ、カヤキリが盛りである。



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