静岡の身近な昆虫たち  観察記 10


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 2002/11/9

秋の虫カマキリ

 11月に入って寒い日が多くなってきて、昆虫の姿はめっきりと減ってきた。そんな寒さの中、まだまだがんばっている虫もいる。寒風が吹くそんな日も、風がさえぎられた日だまりは気持ちいい。ヒトが気持ちいいいのだから寒がりの虫にとってはそこは楽園。玄関のコンクリ、日向のプランター、はては舗装道路。そこが危ないのなんのとは関係なく、とにかく暖かくないと身体が動かない。
 そんなちょっと寒いなというその日、庭の伸びすぎてしまったサザンカをざっくりと剪定していたら、あれま、またかいという具合にチョウセンカマキリの卵鞘が4個みつかった。切ったといっても2本のサザンカ合わせて2m幅くらいのもの。もしかして切らない枝にまだあったかも。葉が繁っていては見えもせず気付かない。たしかに夏の間よく成虫を見かけていたが、こんなに産んでいるとは知らなんだ。

 

 この時期になると庭で日向ぼっこしているのはコカマキリばかりで、チョウセンはもういないだろうと思いきや、今度は屋根に登ってミカンの伸びすぎた枝を切っていたら、なんと緑色のカマキリが・・・。なんだかコカマキリのように小さいが、チョウセンカマキリのオスだった。この時期でオスである。しかもとても新鮮。元気がいい。こっちに気付いて威嚇してきた。きっと身体が温まったのだろう。元気よくおよそ5m先のハナモモの木に飛んでいった。

  

 まだ終わらない、その日の午後、日向のプランターに今度は大きい緑色のカマキリが・・・。いつもはコカマキリがいるその場所には、チョウセンカマキリのメスがいる。オスに比べるとちょっと鈍い。逃げるように草花の中にまぎれてしまった。
 寒くなれば、身体は動かなくなるし、餌はいなくなるし、死んでいかなければならないのだろうか。もしもっと暖かくて餌もまだいるならば、きっと長生きするのだろうなと。それにしても、この時期のカマキリの死因は事故死がもしかして1番ではないのかと思ってしまう。特に住宅地のような場所ではきっと多いと思う。ほんとよく道路や駐車場でつぶれているコカマキリやチョウセンカマキリ。ちょっと山に近いところではオオカマキリ。昆虫の王者の最期はなんだかなあ。
 さて、庭のカマキリいつまで生きるか。
 今年はすごくカマキリを見たような気になった。


 2002/11/10

秋深まっての虫。

 今年は庭の手入れがおろそかで、ツツジやツバキやサクラにノウブドウやらヘクソカズラやらヤマノイモやらカラスウリやらつる植物のオンパレード。クスノキやエノキ、トベラがいつの間にか伸び、イヌタデが生え放題、咲き放題。放っておくとこうにもなるもんだなあと、庭木には害にはなるものの、虫のためにと全部は取らずに適当に残しておいた。
 そのためか、今年はクロウリハムシ、ウリハムシ、ニレハムシ、セスジツユムシ、イボバッタ、オンブバッタ、カマキリ類が多く、スズメガの類の成虫もよく見かけ、アオスジアゲハの幼虫が初登場・・・なんだかにぎやかだった。
 そんな草やらも10月の終わり頃には葉を黄色くして落としていく。そんな頃からか、玄関においてある鉢植えの草(木?名を知らず)にウリハムシが止まっているのをよく目にするようになった。あれ、今日も止まっている。

   

 おお今日は2匹。もっといるかなと下から覗いて見るとなんと葉裏にも。全部で8匹。
 じっと逃げる事もなく、かすかに触角を震わせているだけ。
 そこは暖かい。冷たい風も強くは受けない。いい場所を見つけたものだ。
 11月に入ると、数枚の葉に分散していた8匹は1枚の葉に集まった。やはりじっとしているものの、触角を震わせている。
 この草は葉を落とすのだろうか?もしそうならば何処にいくのだろう。そばにいい場所を用意してあげようか。なんだか毎日楽しみである。
 12/1現在、まだいる。葉っぱが黄色くなってきたから、根元に植木鉢の破片を置いて落ち葉を敷いてみた。


 2002/12/3

虫の最期。

 昆虫は、卵から幼虫、成虫そして寿命まで生きるものはどのくらいいるのだろう。無数に生まれたものも、天敵や病気で成虫になるのも数少ないはず。種類にもよるが、おおよそが1年に満たない寿命だろう。
 野外で出会う昆虫は普通危険を察知すれば咄嗟に逃げる。隠れる。死んだ振りをする。
 だが、まれに様子がおかしいものがいる。ただじっと動かない。突ついてみても歩きはするが逃げることはしない。動かないのではなく、動けない。そのような個体は身体が傷つき翅がボロだったり、脚が欠損していることが多い。そんなのを見ると寿命なのかなあと。
 飼育していているとよくわかる。大抵のものはおそらく野外より長生きする。ナナフシ類やクツワムシなど年を越すし、甲虫でも成虫のまま1年以上生きることがよくある。でも、そのうち脚が欠損してくる。そして食べなくなる。そして衰弱する。
 どんな意識なのだろうか。もうとにかく身体が動かない。したくてもできない。
 たとえ昆虫でもそのような様子はつらい。
 野生生物は身体が壊れたらおしまいだ。ああ、人間でよかった。

 人間も身体が壊れたとき、自力で生きれなくなった時、それが寿命だったのだろうか。
 人間は医療技術によって余命を得ることが出来る。

 なんとかたどり着きたかった。


 2002/12/8

身近な外来昆虫。

 近年、外来動物についての話題が多くなった。ブラックバスや植物、ほ乳類など様々だ。しかし、昆虫については生態系に与える大きな影響がないせいか、話題には上がらない。外国産クワガタ、カブトムシについて若干話題になるがそんなには大きく騒いではいない。
 外来昆虫の生態系に与える影響はいかほどのものなのかは知らない。しかし、生息域の広さ、日本の面積は変わるわけではなく、外来昆虫が幅をきかせている以上は在来種が追いやられていることは間違いない。

 外来種ハンドブックには415種の昆虫が挙げられている。
 身近な野外でよく見かける主なものは、
 <チョウ>モンシロチョウ、アメリカシロヒトリ、ヒロヘリアオイラガ
 <ハチ>セイヨウミツバチ
 <甲虫>ヤサイゾウムシ、ブタクサハムシ、ラミーカミキリ、ベダリアテントウ、シロテンハナムグリ
 <カメムシ>ヨコヅナサシガメ、ルビーロウカイガラムシ、イセリアカイガラムシ
 <バッタ>カンタン、アオマツムシ
 <ゴキブリ>クロゴキブリ、チャバネゴキブリ

 モンシロチョウやシロテン、カンタンは意外な感じだが、どれもなるほどという感じだ。この16種の内、なんと11種が狭い庭に生息している。
 外来昆虫が、外来植物や外来昆虫を食べるのならば問題ないというわけでもなく、本来は在来植物があって、在来昆虫があった。
 外来昆虫でなくても、近年増えてごく普通にみられるツマグロヒョウモンも、園芸種のビオラやパンジーを食う。
 外来センダングサの花に舞うモンシロチョウ、アメリカセンダングサの蜜を吸うセイヨウミツバチ、街路樹に荒らすアメリカシロヒトリ、ヒロヘリアオイラガを食うヨコヅナサシガメ、イセリアカイガラムシを食うベダリアテントウ。
 これらはおかしな光景なのである。

 昆虫は植物との関わりがとても深い。だから外来植物が蔓延している状況と何かしか大きく関わっているに違いない。
 外来昆虫が日本にやって来た経緯は様々、しかし、ペットとして取引し、放虫するのはもってのほかである。

 ただきれいな虫が多くいて、きれいな草花が咲いていて、自然が豊かだね。と簡単に言わないでもらいたい。
 まだまだ世の中の認識はとても甘いように思う。

 このまま容認するのか、排除するのか。排除はむずかしい。殺虫剤を使えば、在来種も巻き添えになるし、更に生態系を乱すだろう。
 昆虫を含めた外来種の問題はやっかいだ。
 その土地本来の生物相、生態系、戻る日がくるのだろうか。



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